
3年程前のことですが、地方都市に住んでいる、60代前半のKさんに入会して頂いたことがありました。結婚しているお嬢様が当会の近くに住んでおられたことから、上京時に世田谷区のタウンページをご覧になり、当会を探し当ててくださり、資料をご郵送することからスタートして、程なく上京され、ご訪問頂いたあと入会してくださいました。
Kさんは地元の大手企業を定年退職なさった直後で、奥様を数年前にご病気で亡くされていました。Kさんの夢は、首都圏で理想のお相手を見出し、65歳までは、仕事を見つけて働きながら、再婚した方と二人で首都圏で暮らし、そのあとは、もしも奥様が賛成してくれたら、帰郷して、今度はのんびりと自宅で二人して、悠々自適の生活を送る、というものでした。
とても意欲的に行動を開始されたKさんは、東京で、当会を含め2ヶ所の相談所の会員となって、本当に精力的にお見合いをして行かれました。その間、地元に帰ったりすることも多く、半年後には地元の相談所2ヶ所にも入会され、ざっくばらんな性格のKさんは、Kさんにとって印象深かったお見合いの様子の詳細を、時々話してくださるのでした。
おそらくすべてのお見合いを合計すると、2年くらいの間に60人近くの方とお見合いをされ、情熱派のKさんは、今にも結婚が決まりそうなお相手が幾人も登場しました。当会を通じてのお見合いのお相手の方でも、明日にはご成婚だ!と思った方が少なくともお二人はいました。・・・でも何故か、その情熱の頂点の直後か直前に、いつも決まって突然破談になるのでした。そしていつもこれも決まって、どちらかが一方的にお断りをするのではなく、「二人で話し合って、結婚は無理ということになりました」という報告になるのでした。Kさんのお話の中の、あの、明日にも決まりそう!という、あの情熱は一体何だったのだろう?そんなにも早く、お二人とも、気持ちを切り替えられるものなのだろうか?!
という私の内心のふか〜い疑問は、結局Kさんに、きちんと問いただす間もなく、ご入会から2年を経過された頃、Kさんは、地元に帰ることになり、退会されることになりました。
♪ 今日は話が長いです、申し訳ありません ♪
そうして、一年近くが過ぎようとした頃、以前の情報誌をご覧になって、一人の方からお申し込みの電話が入りました。事情をお話し、既に退会されていて、関東にはおられないこと、ご結婚への意欲は今はお持ちではない可能性が高いことをお話しましたが、成婚退会でないのならば、現状を聞くだけ聞いてもらえませんでしょうか?という熱心なご依頼でした。また、女性会員の方は、Kさんの住んでいるところに将来は住みたいという強い希望もおありとのことでした。(出身地をご覧になってのお申し込みでした) 何となく断りきれずに、また、Kさんはもしかして、まだお一人かもしれない、という予感もあり、翌日Kさんにお電話をしました。
・・結論から申しますと、Kさんは、地元の結婚相談所からのご紹介の方と結婚されていたのです。「井口さんに報告していなくて申し訳なかったです」と、恐縮されている人柄の良さは変わらず、「ご報告の義務なんて、勿論ないんですよ〜」と答えつつ、あのKさんが、結婚されたんだーーという内心の驚きを知るよしもなく、続けて言われたことは、「いやぁー、本当に、東京にいるときは、どうして自分と等身大のお相手を探そうとしていなかったのか自分でも不思議です。(笑)平凡でも、気持ちの安らぐ相手が一番だと、今、身にしみて感じていますよ。目線が、どうしてあの頃はあんなに高かったのか、自分でもおかしいくらいです・・・」変わらないKさんのお元気なお声でした。
でも、そのお電話から一週間くらいして、何となく私は思いました。
本当は、Kさんも、東京で活動されているときから、本当は、分かっておられたのではないのだろうかと。自分に一番合う人はどんな人であるのかということを。成人されているとは言え、亡くなられたお母様の思い出を、たくさん心にしまっているお子様達と、生涯本当に仲良くやって行ける人はどんな方であるのかということを。でも、その心の落ち着き場所にたどり着くまでに、あの無我夢中の2年間が、Kさんにとってはご必要だったのではないかという気がしたのです。そしてまた、東京での2年間が、Kさんにとっても、もしかして、その時点での「青春」でらしたのではないかという思いも何となく致しました。
・・「妥協」という言葉ではなく、「等身大」という言葉の優しさと力を、まさに、心の安らぎとお幸せをを感じさせられるKさんの朗らかな声から、改めて教えて頂いた気がしました。どうぞ、いつまでも本当にお幸せに・・。